クリニック・歯科医院の電気は、節電で減らせる余地が構造的に小さいという特徴があります。空調は患者さんのために止められず、滅菌器やレントゲン、歯科ユニットは診療に直結し、薬品や材料の冷蔵設備は24時間動きます。
使用量を減らせないなら、下げられるのは契約の側だけです。そのぶん、見直しの比重が大きくなります。
契約容量の確認から
多くのクリニックには2つの契約があります。
| 契約 | 対象 | 基本料金 |
|---|---|---|
| 従量電灯C | 照明・PC・小型機器 | 1kVAあたり約312円 |
| 低圧電力(動力) | 業務用空調、大型機器 | 1kWあたり約1,098円 |
動力の単価は電灯の3倍以上です。ここが実態より大きいと、使わなくても毎月かかり続けます。
医療機関で容量が過大になりやすいのは、開業時に余裕を持たせるケースです。将来的にCTを導入するかもしれない、ユニットを増やすかもしれない——そう考えて大きめに契約し、そのまま数年が経っている。設備計画が変わったなら、契約も合わせる余地があります。
逆に、安易に下げてはいけない業種でもあります。診療中にブレーカーが落ちる事態は避けなければなりません。ピーク時の実測を確認し、余裕を残したうえで判断してください。
平日日中の診療は、卸電力価格の安い時間と重なる
卸電力市場の価格は、昼(太陽光の発電量が多い時間)に下がり、夕方から夜(17〜21時)に最も高くなります。
9時から18時の診療なら、営業時間の大半が安い時間帯に収まります。昼休みに価格がさらに下がる時間帯があり、その間も空調は動き続けます。理屈のうえでは、市場連動型と相性が良い業種です。
ただし、それをそのまま勧めることはしません。
医療機関に、上限のないプランを勧めない理由
市場連動型や、調整費に上限のないプランは、高騰した月に上限なく上がります。2021年1月の寒波では、卸電力価格の月平均が通常の約11倍になり、市場連動型の契約者から高額な請求の相談が相次ぎました(電力・ガス取引監視等委員会)。
一般の店舗なら「その月だけ我慢する」という選択もできますが、医療機関は使用量を絞って調整することができません。空調を止める、滅菌を減らす、という対応が取れないからです。
つまり、価格が上がったときに逃げ場がない。これが医療機関の特殊性です。
平時の安さより、最悪の月にいくらまで上がりうるかで判断してください。上限のあるプランが平時に割高なのは、その保険料だと考えると納得しやすいと思います。
切り替えで診療に影響が出ないか
- 切り替えを理由に停電することはありません。 電気を届ける設備(送配電網)は同じものを使います。変わるのは料金を請求する会社だけです
- 工事は、ほぼ発生しません。 東京電力エリアでは2021年3月末までに、一部を除く全ての世帯・事業所にスマートメーターが設置されています(東京電力パワーグリッド)。旧型が残っている場合のみ交換工事が入り、交換時に目安として約15分の停電が伴う場合があります。日時は事前に相談して決められます
- いまの会社への解約連絡は不要です。 新しい会社が手続きします
診療への影響を最小にしたいなら、休診日にメーター交換を指定するのが確実です。
確認するもの
電気料金の明細が1枚あれば概算は出ます。ただし空調の比重が大きい業種なので、夏と冬の両方を含む12か月分があると、年間で見た比較ができます。夏だけで比べると、年間では合わない結論になります。